平成25年7月に開業して初めての設計案件が、木造で耐火性能が認定された工法を
採用しての設計・監理でした。
『木造耐火建築物』で建てられた事例は、京都市内では1件だけしか実績がないため、どのように設計を進めればよいのか・・・。重要となる施工費はどれ位かかるのかと不安要素がありました。
『木造耐火建築物』での施工は、東京都では木造耐火建築物は年々増えており、鉄骨造よりコストが安く施工が狭小地に適しているということがわかりました。以前工務店に勤務していた時に培った経験を活かし、工務店との協力のもと、概算で建設費の見積書を作成しました。鉄骨造よりはコストが安くなるという事がわかり、また、狭小地では、鉄骨造での建設は建物の間口がぎりぎりまで建てることが難しいことと、近年の鉄鋼材の価格高騰に加え、専門の職人不足を加味すると『木造耐火建築物』で設計するのがベストだと確信しました。
それでも施設の用途上、設備費が余分にかかるため、最終的に建設費4,630万はかかってしまいました。なんとか年が明けた2月着工することができました。着工してからがより大変でした。工務店と綿密に打合せ、色々な問題点をクリアしていかなければなりませんでした。狭小地での設計の大変さを実感しました。それでもなんとか工期通りに完成させ、検査も無事下りて、あの尋常でなかった緊張状況が夢のような気がします。施工監理をどのようにすれば良いのか手探り状態で、工務店も初めての『木造耐火建築物』の建設だったので大変苦労したことでしょう。利用者や地域住民の方が施設を快適に利用できるそれが喜びです。

本敷地面積は、17坪の狭小地であったため、建ペイ率60％、容積率200％と建てられる各階の床面積にかなり制約がありました。
施設の用途上、各階に車椅子対応の便所や洗面コーナー、そして車椅子対応の広めの浴室（ﾕﾆｯﾄﾊﾞｽ）とキッチンスペースと水廻りの床面積を確保しなければならず、デイサービス部分の居室の床面積にしわ寄せがきてしまう・・・。
ましてや利用者は車椅子で上下階移動をするため、必然的にエレベーターを設けなければならず、そこへ各階に階段を設けるとほとんどデイサービスの施設の用途としての機能を満たせない・・・。
そこで、最大限の床面積を確保するため、階段部分を屋外へ出すことを提案。職員は屋外階段を利用するため、スタッフルームから出入りできるようにし、屋外階段を道路面に面して設けたことで避難にも配慮できました。
エレベーター機種選定で、電動車椅子を利用することがあったため、車椅子の重さが約200kgあることで、積載荷重300kgの小型エレベーターを探す必要がありました。しかし、小型では200kgが最大でそれを超えるとビル用になってしまうため、価格も跳ね上がり、昇降路の大きさも大きくなること、木造では対応できない等の問題が出てきました。やむなく、車椅子と人を2回に分けて移動してもらうことで了承を得ました。さまざまな制約をクリアしてなんとか程良い広さのデイサービスの床面積を確保したプランとすることができました。設備機器や造作家具は、利用者及び職員が利用しやすいよう機器選定や家具図詳細を施主様と工務店を交えて何度も打合せました。
外観は、一見すると普通の3階建ての住宅のように見えますが、その建物の中には、さまざまなドラマが詰め込まれているのです。